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まるで日本の話?韓国小説 「韓国が嫌いで」(チャン・ガンミョン著)レビュー

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先日「韓国が嫌いで」という韓国の小説を原書で読みました。

韓国の小説ですが、日本語にも翻訳されています。

ブックレビューはあまり得意では無いのですが、この本は非常に印象に残ったため、ブログに書いて皆さんにご紹介したいと思いました。


「韓国が嫌いで」あらすじ

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物語の核心に迫るネタバレはありませんが、レビューのため、ある程度小説のストーリーをご紹介していきますので、ご了承ください。



主人公は、韓国人女性ケナ。

大学を卒業し、総合金融会社に入社して、3年目。仕事にもあまり興味が持てず、なんとなく過ごす毎日。学生時代から付き合っている彼がいるが、結婚の話はなかなか進まない。

そんな韓国で生きづらさを感じ、オーストラリアに移住することにしたケナ。

彼女がワーホリビザで入国し、永住権・市民権獲得を目指し、幸せの掴み方に気づくまでのストーリーです。

海外生活は、キラキラ?

SNSが普及して、海外の情報が簡単に手に入るようになりました。

インフルエンサーの投稿を見ていると、キラキラしているように見えますが、実際には、楽しいことと同じくらい大変なことも多いのが現実だと思います。


ケナの場合も、オーストラリアで様々なトラブルを経験します。

トラブルについては、著者が実際にオーストラリアで生活したことのある人や移民した人のインタビューをベースに書いたそうで、かなりリアリティーがあると感じました。

ケナがオーストラリアで経験するトラブルの内容は、正直かなりえぐいです…。いったいどんなことが起こるのかは、本を読んでのお楽しみです。

どうせ自分探しの旅でしょう?

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ケナは、ごくごく普通の20代の女の子。

オーストラリアに入国した際は、英語もほとんどできません。

そんな彼女が身一つでオーストラリア移住を目指すなんて、危なっかしく思えます。


それなりに大きな会社に務めていて、優しい彼氏もいたのに、それを捨ててまで外国に行くなんてぜいたくだ。

それに、簡単にオーストラリアに移民なんて甘いんじゃないの?と思う読者も多いのではないかと思います。

ところが、主人公ケナの胸の内が次第にわかってくると、彼女の見え方が180度変わってくるのです。

読者も予想できない、ケナの心の内と成長

韓国語版では、全編通して地の文はケナの語り口調で進んでいきます。

~지 (〜だよね、〜でしょ)~더라(〜なんだよ)といった、友達に語りかけるような口調で書いてあります。この口調が、親しみを感じると同時に、彼女のキャラクターを幼く、頼りなく感じさせます(この独特の文体が日本語版でどのように訳されているのか気になります)。

ところが、物語を読み進めていくうちにケナへの印象が次第に変わっていきます。


ケナが実は非常に努力家であること、自分や周りを非常に冷静な目で見ていることが分かってきます。

そして、オーストラリアでの数年間の経験を通して、前述の数々のトラブル、韓国に残してきたものや人々との決別を通じて、ケナの考えは成熟していきます。

そして最終的に彼女は、自分の住む場所と生き方を見つけることになります。

実は、男性作者の作品

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注目すべきは、この小説の作者が男性だと言うこと。20代女性の心情をこんなに細かく描かれた作品が男性作家の手によるものだとは…本当に驚きです。

もともとこの本に興味がわいたきっかけは、Twitterで著者の方の動画を見たこと。


非常に短いあいさつ程度の動画ですが、著者の方の素敵な人柄がにじみ出ている気がしました。

そんな人が、「韓国が嫌いで」という挑戦的なタイトルで書いたフェミニズム小説という触れ込みが非常に気になり、購入に至りました。


ただ、読んでみて気づいたのはフェミニズム小説とはいっても、本書は「82年生まれ、キム・ジヨン」などのように女性の苦しさにだけフォーカスをあてた作品ではないということでした。

雇用問題、格差社会、人種差別など、ほかのあらゆる社会問題にも言及されています(もちろんその中でジェンダーギャップに起因した問題もありますが)。

(ただ、フェミニズム小説という目線で見たとき、作中で語られるケナの元彼、ジミョンの女性観はかなりキツかったです…)

日本で育った私も共感できた

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この物語は、韓国人女性が主人公なのですが、日本で生まれ育った私にとっても共感する点がたくさんありました

お隣の国、韓国でケナが感じた生きづらさは、日本にも共通するものがあると思います。


私のブログやツイッターは、海外志向が強い方が比較的多く読んでくださっていると思います。

●いつか海外に住んでみたい

●(ケナが、韓国社会を抜け出したように)日本の未来に希望が持てない

●やりたいことがわからない

という方も多いと思うのですが、そんな方にとって、ヒントをくれる一冊だと思います。


語りかける口調だからか、小説というよりエッセイの近く、読みやすく、どなたにもおすすめの一冊です。




この本自体は素晴らしい本なのですが、Amazonなどで検索すると、関連本で嫌韓本がたくさんヒットしてしまうのが本当に悲しいです…。


▼原書はこちら